三界
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんがい/三界
欲界・色界・無色界のこと。すなわち衆生が輪廻して生死を繰り返す三種の境界。Ⓢtrayo dhātavaḥあるいはⓈtri-dhātuの訳語。またⓈkāma-rūpa-ārūpya-dhātuが三界と訳されることもある。三界は五趣(あるいは六趣)とともに仏教の世界観を表している。すなわち欲界には地獄・餓鬼・畜生・人・天の五趣すべてが存在する。色界と無色界には天のみしか存在しない。また欲界の天を六欲天、色界の天を四禅天、無色界の天を四無色天などという。そして色界の四禅天と無色界の四無色天は、天界として生まれ変わる場所であるが、同時に禅定の境地をも意味している。このように輪廻を繰り返す外界としての世界と、禅定の境地を表す内なる世界とが密接に結びついている点は仏教の世界観の特徴といえる。また仏典においては、三界は煩悩に縛られ輪廻にさまよう場所であるから厭うべきものとされ、そこから速やかに抜け出すことが説かれている。浄土宗においては阿弥陀仏の本願を信じて称名念仏を修して往生することこそが三界を出離するために必要なこととされる。
【資料】『俱舎論』八
【参照項目】➡出過三界
【執筆者:石田一裕】