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古本漢語灯録

提供: 新纂浄土宗大辞典

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こほんかんごとうろく/古本漢語灯録

一〇巻。義山による開版以前の古態をとどめた系統の『漢語灯録』のこと。道光の編集になる『黒谷上人語灯録』一八巻(『和語灯録』と『漢語灯録』で構成)は、浄土宗義山によって開版され江戸・明治時代に流布したが、鎌倉時代の日本漢文を整った漢文体に改め、文章を付加削除して刊行された。一方、真宗大谷派の光遠院恵空が元禄年間(一六八八—一七〇四)に書写した『漢語灯録』一〇巻は、古態をとどめ道光編集時に近いとされる。浄土真宗本願寺派の玄智景耀は『浄土真宗教典誌』で、恵空本を古本、義山刊行本を新本と称し、それ以来、恵空本系統を古本『漢語灯録』と呼び習わしている。恵空自筆本は高倉学寮の火災で失われたようだが、江戸時代後期の転写本がいくつか残り、そのうち今岡達音が大正六年(一九一七)古書店で入手した善照寺本が学界に紹介され、その重要性が認知された。大谷大学にも東本願寺枳殻邸きこくていから移管された一本が所蔵され、この二本が古本の代表的写本である。このほかの転写本は調査報告が十分でない。古本の出現で研究が促進され義山版依用からの脱却が進み、昭和三〇年(一九五五)の石井教道編『昭法全』では底本に古本が多く採用された。古本の巻七・一〇の奥書によると、義山は「和州三輪之本」を書写し、のち「二尊院之蔵本」によって校合し、恵空はその校合の付された本を書写している。『恵空老師行状』には、二尊院本を発見したのは恵空で、彼がその流布を義山慫慂しょうようしたところ承諾したという。また巻八奥書には、道光生存中の嘉元四年(一三〇六)に「蓮花堂正本」を覚唱が写したという早い時期の流伝を伝え、その後も中世に転写を重ねている。奥書の三光院や来迎寺は奈良の西山派寺院である。平成七年(一九九五)に発見された大徳寺本『拾遺漢語灯録』は古本系で、これで古態をとどめた『漢語灯録』が揃ったことになる。


【資料】仏教古典叢書『古本漢語灯録』(中外出版、一九二四、再刊一九八四)、浄土宗総合研究所編『黒谷上人語灯録写本集成1 善照寺本古本漢語灯録』(浄土宗、二〇一一)


【参考】藤原猶雪『日本仏教史研究』(大東出版社、一九三八)、宇高良哲『逆修説法諸本の研究』(文化書院、一九八八)、中野正明『法然遺文の基礎的研究』(法蔵館、一九九四)、善裕昭「古本漢語灯録の奥書について」(『現代社会と法然浄土教』山喜房仏書林、二〇一三)


【執筆者:善裕昭】