経巻
提供: 新纂浄土宗大辞典
きょうかん/経巻
経文を記した巻き物。巻軸経巻ともいう。Ⓢpustakaの訳語としても用いられ、この場合は書物や写本の意である。インドでは多羅樹などの葉(貝多羅葉)に書写した。中国では仏典を「経」として受容し、紙に書写した巻子本が主要な形態であったので、「経巻」そのものが仏教経典の意味で用いられた。後に誦経に適した折本が用いられるようになり、巻子本を経巻、折本を経本とも称するようになった。『法華経』法師品には、経巻を仏の如く敬い、種々供養すべきことが説かれている(正蔵九・三〇下)。経巻は住持三宝の一つであり、諸経論にはこれを受持・読誦・解説・書写・供養すべきことを説いている。経巻は紙が黄色、軸が赤塗を通例としたので黄巻赤軸、朱軸ともいう。経典には写経と摺経とがある。写経は書写された経典であり、摺経は木版摺りの経典をいう。平家納経の経巻は、表紙・見返絵・料紙・発装金具・紐帯・軸首などが一体となっている装飾経である。
【執筆者:西城宗隆】