基
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:22時点における192.168.11.48 (トーク)による版
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き/基
唐・貞観六年(六三二)—永淳元年(六八二)一一月一三日。唯識宗(慈恩宗、法相宗)の初祖。窺基ともいうが、碑文・撰号・古写経等はいずれも基または大乗基であることから、基の一字名が正しいとされる。慈恩大師と称される。長安の人。先祖は西域の出身。貞観二二年(六四八)一七歳で出家して玄奘に師事。梵語を修学し、顕慶元年(六五六)二五歳で訳場に列する。同四年『成唯識論』翻訳の際に筆受となり、『成唯識論述記』『成唯識論掌中枢要』の両注釈書を著して、その解釈を確立した。基の教学の特徴としては、三時教判による唯識宗の確立、五姓各別説による一切皆成説の批判、五重唯識観などの新説の提唱などがあげられる。他に『般若波羅蜜多心経幽賛』『妙法蓮華経玄賛』『瑜伽師地論略纂』『因明入正理門論疏』『大乗法苑義林章』など多数の著作があり、「百本の疏主」と称された。弟子に慧沼がいる。なお『阿弥陀経』の注釈書である『阿弥陀経通賛疏』『阿弥陀経疏』と、西方往生を勧める『西方要決釈疑通規』の三疏は、基が兜率往生を願っていたことや、兜率往生を勧める『弥勒上生経疏』等の著作に西方往生を難事としていることから、いずれも真撰ではなく後人の仮託であると考えられる。
【資料】『大慈恩寺三蔵法師伝』(正蔵五〇)
【参考】渡辺隆生「慈恩大師の伝記資料と教学史的概要」(『慈恩大師御影聚英』法蔵館、一九八二)
【参照項目】➡西方要決釈疑通規、阿弥陀経疏二、阿弥陀経通賛疏
【執筆者:吉村誠】