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鏡餅

提供: 新纂浄土宗大辞典

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かがみもち/鏡餅

正月などに神仏に対して供えられる餅で、家の神棚や床の間などに供えられる。寺院において正月を祝う修正会においても仏前に鏡餅が供えられる。大小二つの餅を重ねるのが普通であるが、三段のものや二段のうち一方を赤く染めるものもある。平安末期に成立した『今昔物語』一九には、摂津国の僧が村人たちに請われて修正会導師を勤め、そこで供えられていた餅を貰ったことが記されている。正月に鏡餅を供えるのは、米には人間の生命力を強化する霊力があるとする古代からの信仰が背景となり、鏡を模した形である鏡餅に正月の神が依りつくとされ、日常的な生活や仕事に戻る機会にあたる鏡開きに鏡餅を食べることは、神の力を体内に取り込むことを意味すると、民俗学では理解されている。浄土宗では、鏡餅は新年を祝う修正会のほか、諸儀礼で供え物として用いられる。『法要集』では、修正会・地鎮祭・起工式上棟式落慶式祝聖会結婚式には仏前、あるいは壇上に鏡餅を供えるとしている。また、五重相伝会における諸儀礼においても本尊前・釈尊前・伝灯仏前・位牌前などに供える。


【参考】宮田登『宮田登日本を語る五 暮らしと年中行事』(吉川弘文館、二〇〇六)、野口長義「餅の宗教性」(『双書フォークロアの視点一〇 餅』岩崎美術社、一九八九)、中沢成晃「修正会・修二会と餅・花」(伊藤唯眞編『仏教年中行事』仏教民俗学大系六、名著出版、一九八六)


【参照項目】➡修正会


【執筆者:名和清隆】