ほうねんしょうにんまんだら／法然上人曼陀羅

善導と法然を描いた二幅一対の曼陀羅。知恩院蔵。従来、善導と道綽二幅一対で「二祖曼陀羅」とよばれていた。ところが道綽の幅の四周に、おのおの銘札があり墨書は剝落し判読できないが、法然諸伝に見る白い二幡が舞い降る誕生の奇瑞、清水寺の舞台、九条邸らしき建物や池水、往生時の来迎などを描いているところから、法然の伝記を現していると井川定慶によって訂正され、善導と法然の「二祖曼陀羅」と理解されるようになった。中央の御影は法然が曲彔きょくろくに倚座し正面を向き念珠をつまぐる姿で、前には踏板があり沓くつが置かれている。これは浄土五祖像や禅宗の頂相ちんぞうなどの影響が考えられる。また御影の周りに法然の生涯を描いていることは、浄土宗には少ない掛幅絵伝の性格も合わせ持ち、礼拝用と視覚伝道用に作り出されたものといえよう。製作は南北朝時代といわれる。裏面に宝暦七年（一七五七）修復の墨書がある。