上下二巻、余説一。大玄撰。宝暦四年(一七五四)、増上寺四五世在職時の著作。本来正統であるはずの円頓戒の衰退を危ぶみ、その当時、最上の伝法として扱われていた布薩戒を道理文証に欠ける妄伝として、その邪正を糺ただす書。上下巻三七篇にわたり布薩戒の起こりから伝書の誤謬ごびゅうや譜脈の信憑性を論じ、法然・聖光・良忠・聖冏の著述から円頓戒の正統性を論じている。余説では本章を実際に読んだ周囲の反応を示し、改めて自身の述懐を記している。本書から当時の布薩戒隆盛の様子が窺われる。
【所収】続浄一三
【参照項目】➡布薩戒
【執筆者:渋谷康悦】