夢中松風論
提供: 新纂浄土宗大辞典
むちゅうしょうふうろん/夢中松風論
上中下三巻一〇冊。澄円(智演)著。上巻(四冊)は、夢窓疎石『夢中問答集』の「浄土宗は了義大乗の教えではない」とする説に対して、「浄土宗は真実究竟の至極大乗、頓教一乗」の教えであると反駁したもの。中、下巻は、法然の法語を道光『和語灯録』等から六六例引用するほか、『龍舒浄土文』など、多数の経論を引いて「第十八念仏往生の願」を解釈する。その中で良忠や向阿を「中古当代の先達」と呼ぶも、その教えに異義を挿むなど、澄円独自の浄土教理解が展開される。慶安五年(一六五二)の刊本は、一〇冊本の上巻を刊本用に三巻にととのえ、さらに本書に駁す夢窓『谷響集』に難を加えた文(無題)をそえている。
【所収】続浄九
【参考】三田全信『浄土宗史の諸研究』(光念寺、一九五九)、眞柄和人「『夢中松風論』について—原典についての諸問題—」(『東山学園紀要』三三、一九八八)、同「『夢中松風論』の悪人正機」(同三六、一九九一)
【参照項目】➡夢中問答集
【執筆者:眞柄和人】