今まで聞いたことのない尊い利益。仏の大悲はすべてのものに注がれていることを意味する。『観経疏』玄義分に「慈雲を三界に布しき、法雨を大悲に注がしむることを致す。等しく塵労を洽うるおし、普く未聞の益に沾うるおわずということ莫なし」(聖典二・一六二/浄全二・一下~二上)とある。良忠はこれについて「未聞の益とは、総じて諸経の得益を指す」(『伝通記』玄義分記、浄全二・一二四上)と述べ、経典の教えが初めて説かれることを意味するという。
【執筆者:大屋正順】