一巻。本書は天台の口伝法門に属するもので、「一心三観与円戒同異事」他、七箇の口伝からなる。題号の下には「撰者弁阿」とあり、各口伝の首に「弁阿聖光」、尾に「嘉禎三年八月三日」とあることから、浄土宗二祖聖光の作と考えられるが、内容の多くは『等海口伝抄』(貞和五年〔一三四九〕)に依っていることから、南北朝以降に聖光に仮託されて製作されたものとされる。本書の写本は滋賀県大津市三井寺法明院に蔵されている。
【参考】石井教道「弁阿聖光作『円戒秘訣己証』に就て」(浄土学五・六、一九三三)
【執筆者:米澤実江子】