本尊などが秘仏とされ一般に拝することが叶わない場合、これに代わって厨子や帳とばりの前に安置されている仏像。その位置からこのように呼ばれる。秘仏に必ず伴っているわけではないが、一般の参詣者はこれを眼にすることで本尊の姿を思い描くことができる。秘仏の写しやよく似た像の場合と、尊格のみが共通していて全体の印象は大きく異なる場合とがある。法量もさまざまであるが、秘仏より小さいことも多い。美術史的に優れた作例も存在し、兵庫・一乗寺の銅造観音菩薩立像(国重要文化財)は秘仏と前立いずれもが飛鳥時代の作として著名である。
【参照項目】➡秘仏
【執筆者:近藤謙】