田村円澄著。昭和三一年(一九五六)五月、法蔵館刊。霊験譚など潤色された法然上人の諸伝記に客観的比較考察を施し、法然の歴史的行状を明らかにしようとしたもの。第一部では各種法然諸伝記の系統立てた系譜を、第二部では法然の誕生からその生涯と滅後の法難、門流までの史実探究を、そして第三部では法然伝の諸問題を論じている。戦後の法然伝研究の先駆的成果で、それだけにその後の研究の論点となった部分もある。昭和四七年(一九七二)終二章と引用文献を加え法蔵館より再刊されている。
【執筆者:野村恒道】