仏教の目指す「滅」(涅槃)なる状態・境地に入ること。特に釈尊の死を指す場合に用いられた。元来、涅槃とは煩悩の息やんだ平安な状態を意味し、修行によりこの世で得られるとされた。しかし業・煩悩の観点から完全な解脱が得られるためには、身心の消滅が必要であるとの思潮のもと、涅槃と死とが結びつけられた。この身心の有無を承けて有余依うよえ涅槃・無余依むよえ涅槃という二種涅槃観が示され、大乗仏教に至ると本来清浄涅槃・無住処涅槃という新たな涅槃観も現れる。
【参考】藤田宏達「涅槃」(『岩波講座東洋思想』九『インド仏教』二、岩波書店、一九八八)
【参照項目】➡涅槃
【執筆者:中御門敬教】