中国浄土三流
提供: 新纂浄土宗大辞典
ちゅうごくじょうどさんりゅう/中国浄土三流
中国の浄土教には、慧遠流・慈愍流・道綽善導流という三つの流れがあることをいう。法然は『選択集』一の私釈で「浄土一宗において諸家また同じからず。いわゆる廬山の慧遠法師と、慈愍三蔵と、道綽・善導等とこれなり」(聖典三・一〇三~四)と述べている。慧遠流とは廬山における白蓮社慧遠の念仏思想に端を発するもので、『般舟三昧経』によって念仏三昧を修していく流れである。その特色は禅観と念仏とが一体となり、見仏三昧に入ることを修道の目的としていた。慈愍流とは慈愍三蔵慧日の浄土教を指す。その特色は讃歌による宣揚にあり、とくに『般舟三昧経』にもとづく浄土教に重点がおかれ、称名念仏を行ってはいるが本願に誓われた念仏ではない。また偏禅の徒が浄土教信仰を批判するのに対抗して戒めているところにその特徴がある。道綽善導流とは曇鸞の念仏思想にその源を発し、道綽と善導によって大成された念仏思想の流れで、法然の継承する念仏思想の源流である。仏教を聖道・浄土の二門に分けて、末法濁悪の世では「浄土三部経」をよりどころとする易行道としての念仏による浄土往生を説く。法然自らは「偏依善導」の立場から道綽・善導流によることを明確にしている。このように中国浄土教を三流に分ける見方は、中国の文献に直接的には示されていない。したがって、この説は法然自身が中国浄土教の五祖を選定する過程で自ら見極めた中国浄土教のとらえ方を示すものであるといえよう。
【参考】恵谷隆戒『浄土教理史』(浄土宗、一九九七)
【執筆者:金子寛哉】