千手観音
提供: 新纂浄土宗大辞典
せんじゅかんのん/千手観音
千本の手を持ち、それぞれの手に眼がついている観音菩薩のことで、変化観音の一つであり、六観音の一つとされる。千手千眼観音、十一面千手千眼観音、大悲観音などともいう。千手は、ⓈSahasrabhujaの訳。千という数字は実数と考えてもいいが、無限であることを表している。千の手と眼によって、あらゆる衆生を救済するという観音菩薩の慈悲の広大さと、能力を示している。像容は、一一面四二臂を持つものが一般的で、二七面四二臂を持つものもある。四二本の手それぞれに持物があり、胸前で合掌する二本の手を除いた四〇本の手が、それぞれ二十五有の世界を救う能力を持ち、「二五×四〇=一〇〇〇」であると考えられる。観音菩薩が千本の手を持つことになった由来は、伽梵達摩訳『千手千眼観世音菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼経』(正蔵二〇・一〇六中~下)に説かれている。千手観音を信仰すれば、延命・滅罪・除病の功徳があるとされ、広く信仰されている。実際に千本の手を持つ像も造られており、唐招提寺、葛井寺の千手観音像は千本の手を持つ像として有名である。【図版】巻末付録
【執筆者:吉澤秀知】