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新盆

提供: 新纂浄土宗大辞典

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にいぼん/新盆

新たに亡くなった死者(新仏)を迎え祀るための盆。亡くなってから初めて迎える盆を指すが、初めての盆が四十九日を経ていない場合には、翌年の盆を新盆とするところが多い。三年後までの盆を新盆とする地方もある。シンボン、ハツボン、アラボンなどとも言う。祀られる場所、祀られる期間、祀りを受ける範囲などにおいて通常の先祖霊とは違いが見られる。新盆の場合は通常の場合より早く迎え長く祀っておこうとするのが全国的で、一日あるいは七日から新仏を迎えるための高灯籠切子きりこ灯籠を掲げたり棚を設けたりする。また玄関先に真白な提灯をかける風習は全国的に見られ、この提灯に経文や戒名を記すこともある。これらの棚や提灯を片づけるのは二〇日や三〇日とする地域が多く見られる。新仏を祀る棚の場所は、先祖のための棚が屋内に設けられるのに対して、屋外やそれに近い縁側等に設けられる事例が西日本を中心として多く見られる。また新盆の場合には、通常の盆より共同祭祀の性格が強く見られる。通常の盆の場合でも親戚知己が見舞いに往来するが、新盆の場合にはより広い範囲の親戚や地域の人びとが訪れるべきものとされ、地域の念仏講新盆の家々を供養のために訪れたりする。また盆踊りにおいて新仏供養するための踊りが踊られる事例も見られ、例えば愛媛県怒和島ぬわじま元怒和地区で行われている「新盆あらぼん供養踊り」は別名「位牌踊り」ともいい、新仏位牌を箱に収め、参加者はこの箱を代わる代わる背負って踊り、多くの人に背負われ踊られることが死者の供養になると考えられている。このように、盆における新仏の祀られ方が通常の先祖霊と異なるのは、新仏が死の穢れを有し不安定な死者霊であるからという考え方が民俗学での通説となっている。


【参考】田中宣一『年中行事の研究』(桜楓社、一九九二)、柳田国男「先祖の話」(『柳田国男全集』一五、筑摩書房、一九九八)、伊藤唯眞『仏教と民俗宗教』(国書刊行会、一九八四)


【参照項目】➡新仏盆行事精霊棚


【執筆者:名和清隆】