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呪術

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じゅじゅつ/呪術

神霊など超自然的な力に働きかけて、特定の現象を引き起こすための行為やその知識。英語magicの訳語で、古代ペルシャ語で司祭ないし呪術師を表すmagusに由来する。その目的により、よい結果をもたらそうとする白呪術と、他者にとって好ましくない結果をもたらそうとする黒呪術に区別される。呪術はその社会のコスモロジーに根ざしており、そのコスモロジーによって効果が強められる。イギリスの人類学者J・G・フレイザーは、呪術をその思考論理により二つに分類した。一つは、「類似の原理」による「類感呪術」であり、これは、結果は原因に似るとする考え方に基づく。雨乞いのために、黒い煙を上げたり、鉦を叩いたりするのは、煙が雨雲と、鉦の音が雷鳴と類似するからである。もう一つは、「接触の原理」による「感染呪術」である。これは、一時期接触したものは接触後も影響し合うとする考えに基づくもので、相手の爪や毛髪を焼くと相手に災いが降りかかるというのがその例。フランスのL・レヴィ=ブリュルは、ある事物や現象がそれ自身であると同時にそれ以外の何ものかでもあるという論理を「融即」の論理と呼んだが、これにより呪術的な思考が説明可能になる。こうした呪術の論理や認識論は、現代社会においても依然として作用している。フレイザーは呪術宗教を峻別し、呪術が神霊を統御しようとするのに対し宗教は神霊に祈願する点が異なるとしたが、現在では呪術宗教の実践面における一形態であるとみなされることが多い。日本各地に見られる民間念仏を、それを唱えることによって功徳を得るものとするならば、呪術の一種とみなされる可能性がある。しかし、浄土宗念仏の本旨が阿弥陀仏への帰依極楽往生を願うという点にあることを重視すれば、呪術とは区別されなければならない。


【参考】J・G・フレイザー著/神成利男訳『金枝篇』一(国書刊行会、二〇〇四)


【執筆者:宮坂清】