シャマニズム
提供: 新纂浄土宗大辞典
シャマニズム
シャマン(shaman)と呼ばれる呪術的職能者を中心として、その依頼者・信者らとともに形成される宗教的な現象。シャマンの語は北東アジアに分布するツングース(現・エヴェンキ)族の職能者サマン(šaman, saman)に由来するが、現在では世界各地にみられる類似の現象を表す語として定着している。また世界宗教など深遠な教義をもつ宗教の基層にシャマニズム(shamanism)がみられることが明らかにされている。シャマンが他の職能者と区別される点は、予言、託宣、卜占、祭儀、治病などの役割を果たすとき、神霊などの超自然的存在と直接交流するところにある。その際、トランスと呼ばれる変性意識状態に陥ることが多く、そのために薬物を用いる場合もある。シャマンが神霊と直接交流する仕方には、大きく二通りあるとされる。一つは、自己の魂を身体から離脱させ超自然的領域に飛翔して神霊と直接交流する仕方であり、脱魂(ecstasy)と呼ばれる。もう一つは、自己の身体に神霊を招いて直接交流する仕方であり、憑霊(possession)と呼ばれる。日本では古くから神懸かりとして知られる。日本を含むアジアには憑霊型のシャマンが多いが、その形態は多様である。東北地方のイタコが行う口寄せでは、イタコの身体に入りこんだ死者の霊が直接話法で話すが(憑入型)、沖縄のユタは神の姿や声を見聞きしそれを間接話法で依頼者に伝える(憑感型)。日本のシャマンは、死霊・祖霊の口寄せを通じその供養に関わることが少なくなく、同じく死者供養に関わる仏教僧侶と活動領域を共有することがある。またチベットでは、シャマニズムはダライ・ラマをはじめとするトゥルク(活仏)への信仰として仏教に取り込まれたと考えられるほか、シャマンの儀礼も仏教に大きく依拠していることが多い。
【参考】佐々木宏幹『シャーマニズムの人類学』(弘文堂、一九八四)
【参照項目】➡アニミズム
【執筆者:宮坂清】