一向義
提供: 新纂浄土宗大辞典
いっこうぎ/一向義
一
親鸞の説く教えやその門流に対する他宗からの呼称。聖聡作と伝えられる『浄土三国仏祖伝集』下に「親鸞法橋は一向義を立て一向宗と号す。〈今世の一向衆これなり〉」(続浄一七・三三〇上〜下)とあり、また妙瑞の『徹選択集私志記』には「一向義の口伝抄のごとし」(浄全八・二〇〇上)とある。この両書はともに鎮西流を法然の正伝とする立場から、法然の教えに背く流儀の一つとして「一向義」を挙げている。
【参照項目】➡一向宗
【執筆者:米澤実江子】
二
浄土宗三祖良忠に師事した一向俊聖を祖とする一派の呼称。俊聖は遊行と踊り念仏に徹した念仏聖であり、江戸時代には時宗十二派の一つである一向派の派祖とされ、一向衆(一向宗)とも呼ばれた。しかしその教義は親鸞の一向義とは異なるものであり、現在は浄土宗に属する。
【参考】恵谷隆戒『補訂概説浄土宗史』(隆文館、一九七八)
【執筆者:米澤実江子】