むしん/無心
一切の思慮分別にとらわれず、心の作用、執着を滅した状態。有心に対する。唯識の説では無想天、無想定、滅尽定、睡眠、悶絶のときには意識が作用することがないので五位無心、あるいは無余依涅槃界を加えて六位無心を説く。『瑜伽論』によると無余依涅槃界のみ阿頼耶識を滅しきっているので、これこそが無心地であるとする(正蔵三〇・三四五上)。また一切の妄念をなくした心の状態をいい、『一遍上人語録』下では「有心も生死の道、無心は涅槃の城なり…しかれば浄土をば無心領納自然知ともいい」(仏全六六・三〇)とあり、無心の境地に達することが極楽浄土に往生することであると説いている。
【執筆者:石上壽應】