「戒本」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:21時点における最新版
かいほん/戒本
教団法として比丘や比丘尼が守るべき生活規則の条文(学処)だけを集めたもの。ⓈprātimokṣasūtraⓅpātimokkhasutta。漢訳では波羅提木叉経、戒経とも訳される。比丘や比丘尼の教団法である律は、通常、経分別と犍度という二つの部分を中心としており、このうちの経分別に比丘や比丘尼が守るべき生活規則が説かれている。経分別の「経」とは、比丘・比丘尼の規則条項を指しており、それら一つ一つは伝統的に「学処(ⓈśikṣāpadaⓅsikkhāpada)」と呼ばれ、学処をすべて集めた全体が、「波羅提木叉(ⓈprātimokṣaⓅpātimokkha)」と呼ばれている。経分別では、規則条項だけでなく、それぞれの規則制定の背景となった事件や規則条項中の言葉の意味など様々な解説が行われていて、この部分が「分別」に該当する。現存する経分別は、次の五つの要素からなると説明されることが多い。すなわち①因縁譚(規定制定の原因となる物語)②結戒(学処条文の提示)③随結(改定が必要となった因縁譚と改定された学処条文の提示)④解釈(学処条文の語句の説明と解説)⑤持判(判例集)である。経分別において最も重要な部分は、②の学処条文そのものであり、この部分のみを抜き出して箇条書きにした文献が、戒本あるいは戒経、波羅提木叉経と呼ばれ、単独の文献として流布していたと考えられている。正蔵に一三種類の戒本が含まれていることからも、その重要性を窺うことができるが、それぞれの戒本には、伝持した部派の立場が示されており、個々の戒本によって説かれる学処の数等は微妙に異なっている。とはいえ戒本は①波羅夷法②僧残法③不定法④捨堕法⑤波逸提法⑥波羅提提舎尼法⑦衆学法⑧滅諍法という八つの要素から構成されており、この点はほとんどの文献で共通している。
【執筆者:山極伸之】