「五苦」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ごく/五苦
五つの苦しみ。解釈、用例に種々ある。①生・老・病・死の四苦と愛別離苦を合わせた五種の苦。『観経』に「濁悪不善にして、五苦に逼められん」(聖典一・二九二/浄全一・三九)とあり、これを善導『観経疏』序分義では四苦に愛別離苦を加えたものとする。②五道において受ける苦。五趣苦ともいう。『五苦章句経』には三界五道における苦として諸天苦・人道苦・畜生苦・餓鬼苦・地獄苦を挙げる。③『瑜伽論』四四には有情界において菩薩が観る一百一十種苦の所説中に五苦として因苦・受苦・唯無楽苦・受不断苦・出離遠離寂静菩提楽所対治家欲界結尋異生苦と、逼迫苦・衆具匱乏苦・界不平等苦・所愛変壊苦・三界煩悩品麤重苦の二種の五苦を挙げる。④『無量寿経』における五痛五焼を五苦とする説(浄影『観経義疏』など)。吉蔵の『観経義疏』は五痛五焼を五濁とし、五濁すなわち五苦とする。⑤生・老・病・死の四苦を一苦とし、愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦の四つの苦と合わせて五苦とする説。⑥母人懐妊従死得生苦・老人顔色敗壊苦・病人困劣苦・人死風刀断脈苦・犯罪人束縛送獄苦の五種。五使ともいう(『五苦章句経』に出る)。⑦求財苦・守護苦・散失苦・失命苦・未来苦の五種(良忠『往生要集義記』二)。
【執筆者:北條竜士】