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「広疑瑞決集」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:23時点における最新版

こうぎずいけつしゅう/広疑瑞決集

五巻。信瑞著。建長八年(一二五六)成立。書名は諏訪氏一族の上原馬允めじょう敦広の信仰上の疑問に対し、信瑞が答え決したことに由来する。質疑応答は大別して二五項、細別すると六〇余以上に及ぶ。簡単な浄土教義や、殺生念仏、神仏関係など在俗の立場からのものが多く、当時の神官、武士層の念仏受容の実態、また僧侶側の念仏教化の様相が窺われて興味深い。また信瑞の神祇観と治政論も知ることができる。本書が存覚の『諸神本懐集』に影響を及ぼしたとの見方も一部にある。名古屋市円輪寺経蔵関通本訳本の完本が伝えられ、大正四年(一九一五)伊藤祐晃により翻刻された(『広疑瑞決集利剣名号折伏鈔』三師講説発刊所)。底本の円輪寺本は太平洋戦争の空襲で焼失したが、その複写本が大正大学附属図書館に架蔵されている。


【参考】伊藤唯眞「専修念仏者の神祇観と治政論」(『浄土宗の成立と展開』吉川弘文館、一九八一)、松井輝昭「鎌倉時代における仏教受容の問題点—信瑞著『広疑瑞決集』の史的位置をめぐって—」(『史学研究』一六七、一九八五)、祢津宗伸「歴史資料としての『広疑瑞決集』—敬西房信瑞、上原馬允の背景と諏訪信仰—」(『信濃』五四—五、二〇〇二)


【参照項目】➡上原敦広


【執筆者:伊藤唯眞】