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「講」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:23時点における最新版

こう/講

何らかの目的のために組織された集団のことで、宗教・政治・経済など様々な目的の講があり、社交・娯楽的側面を持つ場合も多い。なお、講とは元来、仏典を講究する僧侶の集団、ひいては寺院で執行する法会のことであった。宗教的目的を持つ講には、構成員の範囲が地域共同体を超えるものと超えないものの両者がある。前者には浄土真宗の報恩講、日蓮宗題目講・身延講、御嶽教の御嶽講、扶桑教の扶桑講などのような仏教神道の各宗派教派による教線拡大と檀徒・信徒組織の強化を目的とした講や、伊勢講・富士講・熊野講・金毘羅講・秋葉講のように、霊山名社に参詣・代参するための講がある。これら同信的信仰集団の多くは、地域共同体を超えて組織されることが多い。一方、地域共同体が基盤となり構成されるものには、宮座講・氏神講・歩射びしゃ講などと呼ばれる主として氏神を信奉する講、農業・漁業・林業・養蚕など産業に関わる神々を信仰する講、葬儀や地域の行事で念仏を称える念仏講、また道教信仰に基づく庚申こうしん講など様々な講が見られる。これらの講には、地域共同体内において職業別・社会階層別・年齢階層別に組織されるものもある。例えば職業別では大工・左官・木地師きじしらによる太子講・山の神講、馬持・牛持らの交通業者による馬頭観音講・牛頭ごず天王講など、社会階層別では地主(親方)講、小作(子方)講、網主の講・網子の講など、年齢階層別では幼年講・若衆講・戸主講・老年講などが形成される。また、子安講のように女性のみによって構成されるものもある。さらに講の中には経済活動を目的としたものもあり、金融を目的とした頼母子たのもし講や無尽講は鎌倉時代にはすでに行われるようになっていたが、寺院僧房のなかで組織され寺院の財政や生活を支えていた例も見られる。また生活や生産に必要な家財物品を購入するための講や、農耕や漁業などで労働力を提供し交換し合うモヤイやユイと呼ばれる講もある。


【参考】桜井徳太郎『講集団の研究』(『桜井徳太郎著作集』一、吉川弘文館、一九八八)


【参照項目】➡尼講元祖講観音講慈教講念仏講幡随意講百味講弥陀講迎講無尽講吉水講


【執筆者:名和清隆】