「観音菩薩像」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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かんのんぼさつぞう/観音菩薩像
観音菩薩の図像。観音菩薩には聖観音、千手観音、十一面観音など多くの種類があり、菩薩像の形式も多岐にわたる。また単体の作例と三尊像の脇侍とに大別できる。いわゆる『観音経』(『法華経』普門品)などに代表される観音信仰の流布とともに菩薩像も造られたと考えられる。インドでは、初期の菩薩像に「観音(ⓈAvalokiteśvara)」の銘が刻まれたものはほぼなく、観音菩薩像の成立については不明な点が多いが、おおよそガンダーラに起源を持つと考えられている。ガンダーラ出土の菩薩像の中で、手に蓮華を持った菩薩像(持蓮華菩薩像)が観音と推定され、この観音と推定される菩薩像は、仏三尊像形式にみられるものと、単独の菩薩像とがある。また、持蓮華菩薩を含む仏三尊像形式を阿弥陀三尊の起源とみる説もある。またスリランカにおいても八世紀頃と推定される観音菩薩像が発見されており、インドを中心に観音菩薩像への信仰が存在したことが理解される。中国への流伝も起源は不明であるが、敦煌などの西域地方においても観音とみられる図像が存在し、シルクロードを通って中国に伝わったことが理解できる。またこの過程において、インドにおける観音菩薩像の男性的な造形が、女性的な造形へと変化したと考えられる。中国において、観音の銘がある像が現れるのは六世紀前半頃からであり、以降さかんに観音菩薩像が造られた。日本への流伝は飛鳥時代とみられ、その代表例に百済観音(法隆寺蔵、国宝)がある。その後も奈良、平安、鎌倉と観音菩薩像は多数造られた。不空羂索観音立像(奈良時代、東大寺蔵、国宝)、十一面観音立像(平安時代、法華寺蔵、国宝)、千手観音坐像(鎌倉時代、三十三間堂蔵、国宝)など各時代において多数の優れた作品が存在する。観音菩薩像の造形の特色としては、インドにおいては男性的で手には蓮華を持つ。一方、中国や日本における観音菩薩像は女性的な造形が多く、手には蓮華の他、水瓶を持つ作例も多い。
【参考】宮治昭『インド仏教美術史論』(中央公論美術出版、二〇一〇)、森祖道「ダンベーゴダの観音菩薩像とその復興—スリランカ大乗仏教研究—」(『パーリ学仏教文化学』七、一九九四)、能仁正顕「ガンダーラ出土仏三尊像と大阿弥陀経」(印仏研究五七—一、二〇〇八)【図版】巻末付録
【参照項目】➡聖観音、如意輪観音、十一面観音、千手観音、馬頭観音、不空羂索観音
【執筆者:石田一裕】