「祐天大僧正御伝記」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ゆうてんだいそうじょうごでんき/祐天大僧正御伝記
写本。巻数不定。『祐天御一代記』と外題するもの、『祐天記』と題されるものなど多くの異本があり、内容にも異同がある。編著者は不明だが、巻頭に宝暦一三年(一七六三)六月一四日より七月七日まで麻布正善寺(『江戸砂子温故名跡誌』に天台宗とある)において全道和尚なる僧の説法したものの聞書であることが述べられているものがある。祐天はもと愚鈍の身であったが、成田不動に参籠して不動明王の宝剣を吞み智慧を授かったとする。そもそもこの話は、大巌寺開山の貞把の伝記にあったものが、享保二〇年(一七三五)に二代目市川団十郎が大量の血を吐き病に伏し、成田不動に願掛けして助かった際、昔祐天が成田不動で剣を吞み血を吐いたとして語られるようになったと考えられる。そうした逸話が伝記に記述された初出である。浄土宗系の伝記に書かれない祐天の事績を多く取り上げるが、史実として認めがたいものが多く、念仏による救済を祐天の法力として扱う内容となっている。断片的であった祐天の事績をつなぎ、一般庶民にはあいまいであった祐天像を新たに作り上げた。『祐天上人御一代記』(栄泉社、一八八三/東京金泉堂、一八八六)、『西行法師御実伝記 祐天上人御実伝記』(鶴声社、一八八七)、『祐天上人御実伝記』(野村銀次、一八九五)に翻刻出版された。
【所収】『近世実録全書』八(一九一八)、『祐天寺史資料集』二(祐天寺、二〇〇四)
【執筆者:巖谷勝正】