香湯偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
こうとうげ/香湯偈
道場に入堂する際に身を浄めるために唱える偈文。「香湯薫沐澡諸垢 法身具足五分充 般若円照解脱満 群生同会法界融」。『四分律行事鈔』(正蔵四〇・三五下)は「香湯薫沐」を「香水薫沐」とする。香木を煎じた湯によって、諸々の垢を澡い浄め、法身が具足して、智慧円かに照らしだされて悟りを成就し、あらゆる人々が共に同じく浄土に会して法界と融合する、という意。香水の作法の際に唱える香水偈は悪を断つ徳があることを説き、香湯偈は善を修める徳があることを示し、また、前者が因を、後者が果と利生を説いている。五重相伝の正伝法前伝(要偈道場)と授戒会の正授戒のときに香水・香湯の作法をする際に唱えるが、このときは香水偈と香湯偈を一つの偈文として唱え、各句の最後の字句を二音のばして発声する。受者が手を浄めている間、香水・香湯の係等が繰り返して唱える。受者は両手を差し伸べて、香湯を流してもらって手を浄める。香湯は丁子などの香木をあらかじめ煎じたもので、作法の前に適温にして用いる。香水と同様に流す場合と水瓶を用いて散杖で手の平に洒浄する作法がある。『布薩法則』でも唱えた。
【執筆者:西城宗隆】