頭光踏蓮の御影
提供: 新纂浄土宗大辞典
ずこうとうれんのみえい/頭光踏蓮の御影
九条兼実が法然を信仰するあまり感得した姿で、頭上より後光が現出し、足は地を離れて蓮華を踏んでいる様を模した法然の御影。『四十八巻伝』八によれば「上人、月輪殿に参り給いて、数刻御法談有りけり。退出の時、禅閣庭上に崩れ降りさせ給いて、上人を礼拝し、御額を地に付けて、稍久しくありて、起きさせ給えり。御涙に噎びて、仰せられて曰く、上人地を離れて、虚空に蓮花を踏み、後ろに頭光現じて、出で給いつるをば見ずや」(聖典六・八七/法伝全三六)とその様を伝え、この伝承を影像にしたものである。また彫刻化(立体化)したものに京都鹿ヶ谷法然院の法然像がある。法然院建立(延宝九年〔一六八一〕五月)後、わずか数ヶ月後に歴史・地理に詳しかった黒川道祐が訪れ、「方丈の風景筆に及びがたし」「法然上人自作の像、同龕に安置し常念仏執行あり、上人自作の像殊勝なり」(『東西歴覧記』)と上人像を拝している。もと金色であったと考えられ、右の目元や衣、五条袈裟の襞に金箔の残存と考えられるところがある。
【資料】『四巻伝』、『九巻伝』、黒川道祐『東西歴覧記』
【執筆者:成田俊治】