預所
提供: 新纂浄土宗大辞典
あずかりどころ/預所
一二世紀はじめ頃に成立した荘官の一つ。「あずかっそ」ともいう。本所・領家などの荘園領主の代理人として、下司・公文などの下級荘官を指揮して、荘地・荘民・年貢などの管理をした。この職には、領家の腹心者が任命される場合と、開発した荘地の管理権を掌握しながら、荘地を領家に寄進して、管理権を安堵されるかたちで任命される場合がある。『私日記』や『四十八巻伝』一などは、保延七年(一一四一)春に法然の父漆間時国の館を夜襲した明石源内定明は稲岡庄の預所とする。『台記』康治二年(一一四三)七月二四日の条には、定明の父定国はもと堀河天皇に仕えていた滝口で馬允に叙せられていたが、堀河天皇の崩御(嘉承二年〔一一〇七〕)の後に美作国に下向し、定明の滝口への推挙を望んだことなどを記すことから、堀河天皇の所領を父子が預かった可能性があり、堀河天皇の権勢を背後にもつ定明は、在地勢力であった押領使の時国と利害を異にしていたとも考えられる。
【資料】『台記』一(『増補史料大成』二三、臨川書店、一九七四)
【参考】西岡虎之助『荘園史の研究』上(岩波書店、一九五三)、安田元久「荘官的領主制の形成」(竹内理三編『日本封建制成立の研究』吉川弘文館、一九五五)、田村円澄『法然』(『人物叢書』三六、吉川弘文館、一九五九)
【執筆者:山本博子】