西円寺
提供: 新纂浄土宗大辞典
さいえんじ/西円寺
山口県長門市仙崎。本慶山天龍院。山口教区№一二二。草創年次は未詳。往古は律宗(真言宗とも)の寺院であったが退廃。元禄九年(一六九六)通浦向岸寺の隠居三誉春随が旧跡の再興を藩主に願い出て堂宇を建立、浄土宗に改め自身は中興開山となった。安永八年(一七七九)請われて光誉法岸が住し、日課念仏を中心に教化。文化九年(一八一二)弟子承誉法洲が住す。法洲は真宗門徒と対立し、文政八年(一八二五)萩の沖合の羽島に配流されたが、前年弟子元誉法道を住持とした。法道は田植念仏・初夜念仏などで教化に努める一方、同一一年伽藍を再建した。法岸・法洲・法道は捨世主義の専修念仏の僧として、平易・実践を重んじ、庶民の教化、子女の教育に努め、大日比三師といわれる。今も仏典・和漢の典籍を多く所蔵。本堂・三門は県文化財。法洲が入唐僧の持ち帰った種を譲り受けたと伝えるアオバスは県天然記念物。法岸の隠居所は尼僧の学問所となり、尼寺法船庵として現在に至る。
【資料】『浄土宗寺院由緒書』下(『増上寺史料集』七)
【執筆者:中野真理子】