浄土慈悲集
提供: 新纂浄土宗大辞典
じょうどじひしゅう/浄土慈悲集
三巻(上巻の一部のみ現存)。具名を『略諸経論念仏法門往生浄土集』といい、略して『往生浄土集』『浄土慈悲集』『慈悲集』『慈愍集』ともいう。慈愍撰。八世紀初めの成立。慈愍の浄土往生思想を述べたもの。念仏と禅定と戒のいずれも同等に重視する禅浄戒合行思想をその特徴とする。ただし本書は完本として存在しないため、その思想の詳細を知ることができない。本書は宋代に元照が開版し流通させたが、禅宗を強く批判する内容であったため、禅宗の法英らによって破棄された。現存本は高麗の義天が開版したもので、韓国の桐華寺と海印寺にその上巻の一部のみが伝わっている。
【資料】正蔵八五、大屋徳城『鮮支巡礼行』(東方文献刊行会、一九三〇)
【参考】望月信亨『浄土教の研究』(金尾文淵堂、一九三〇)、同『支那浄土教理史』(法蔵館、一九四二)、小野玄妙『仏教の美術と歴史』(大蔵出版、一九三七)、松野瑞光「慈愍三蔵慧日の浄土教思想—禅浄戒合行説の再検討—」(浄土学四二、二〇〇五)
【参照項目】➡慈愍
【執筆者:石川琢道】