しきみ/樒
シキミ科の常緑樹で、香気が強いことから香花・香柴などとも呼ばれる。『真俗仏事編』には「樒は鑑真が請来した花で、無熱池の青蓮華に似ていることから仏前に供える」(二・三オ)と記され、果実に毒があることから、古くは土葬の墳墓を動物が荒らさないように、遺体の傍に植えられ、現在でも墓花として用いられている。葬送儀礼では枕飾りの一本樒のほか、地域によっては供花として用いられ、能化の葬儀には法類が樒を供するのが古例とされている。また洒水の撥遣作法では蓮台に擬して、仏・菩薩や精霊を奉送するために用いられる。
【資料】子登『真俗仏事編』
【執筆者:熊井康雄】