念仏往生伝
提供: 新纂浄土宗大辞典
ねんぶつおうじょうでん/念仏往生伝
残闕一巻。行仙撰。首尾・中間部を欠く金沢文庫本が唯一の伝本で、書名は発見時に仮に付されたものが通称化した。現存部分には、上野・武蔵・信濃・伊豆・摂津など地方出身の念仏者一七名分の伝記が残される。源頼朝に仕えて法然に帰依した大胡太郎実秀や、法然の弟子の湛空・妙真尼・禅勝房の伝記などを収載する。伝記中に、善導や法然の教えを示すなど、法然遷化後にその教えが関東の武士や庶民に流布していたことを具体的に証明する作品として、その意義は大きい。また各種法然伝の成立を考える上でも、見逃せない史料である。
【所収】『日本思想大系』(岩波書店、一九七四)、谷山俊英『中世往生伝の形成と法然浄土教団』(勉誠出版、二〇一二)
【参照項目】➡行仙
【執筆者:吉原浩人】