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往生西方略伝

提供: 新纂浄土宗大辞典

おうじょうさいほうりゃくでん/往生西方略伝

一巻。『西方略伝』『浄土略伝』ともいう。慈雲遵式じゅんしき撰。宋・天禧元年(一〇一七)成立。浄土教信仰者であった役人馬亮のために、インドから中国にわたる三三人の往生の事績を著したもの。本書はすでに散逸しており、内容は遵式の短編著作集『天竺別集』中(続蔵五七)にある「往生西方略伝新序」と、金沢文庫所蔵『唐朝京師善導和尚類聚伝』(『金沢文庫資料全書』四)に引用される善導伝からうかがい知るのみである。遵式は、本書において善導阿弥陀仏化身であると述べており、このことは後代の中国や日本の「善導伝」に影響を与えている。なかでも、法然が『類聚浄土五祖伝』(昭法全八五三)に王日休龍舒りゅうじょ浄土文』善導伝を通じて、本書の善導弥陀化身説を用いている点は注目される。


【参考】林田康順「『選択集』における善導弥陀化身説の意義—選択と偏依—」(『仏教文化研究』四二・四三、一九九八)


【執筆者:吉水岳彦】