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天神地祇

提供: 新纂浄土宗大辞典

てんじんちぎ/天神地祇

天神は天の神、地祇は地の神のこと。天神地神ともいい、神祇と略される。中国宋代の従義撰『金光明経玄義順正記』には「地祇は即ち地神なり。天神を霊と曰い、地神を祇と曰い」(続蔵二〇・三〇四中)とある。帝釈天梵天をはじめとする天界に住む諸神を天神、堅牢地祇(地神)や八大竜王など地界に住む諸神を地祇とし天地間のすべての神々を指す。


【執筆者:高瀬麻衣】


天地のすべての神々を指す総称。日本における天つ神と国つ神をいう。天つ神は、高天原の神々、また高天原からこの国に降臨した神をいう。国つ神はこの国に生まれた神を指す場合と天孫降臨以前にこの国に存在していた神や豪族を指す場合がある。『古事記』においては、天つ神でも天之御中主神あめのみなかぬしのかみ高御たかみ産巣日むすびのかみかみ産巣日むすびのかみ宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ天之常立神あめのとこたちのかみを天上に存在する神と区別して別天神という。『令義解』神祇令では天神は伊勢、山城鴨、住吉、出雲国造斎神などであり、地祇は大神、大倭、葛木鴨、出雲大汝神などであるという。なおこの天神地祇という表記は、中国思想の影響が大きい。中国では天神は昊天上帝、日月星辰、司中、司命、風師、天師などであり、地祇は后土、社稷、五祀、五岳などである。『古事記』『日本書紀』においては、地祇が用いられるのは中国思想に基づいて天つ神と対句的に用いられる場合に限定される。また現在、天神のみで用いられるときは、天満天神の菅原道真を指す場合が多い。これは天満大自在天神であり、天候を司る雷神と道真の御霊と殺牛祭神における漢神、密教の護法神、神話の天つ神が習合して成立した神格である。


【参考】国学院大学日本文化研究所編『神道事典』(弘文堂、一九九九)


【執筆者:松野智章】