呪文
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅもん/呪文
呪術行為や儀礼において、呪術的効果や呪力の発揮を期待して唱えたり、札や身体に書く文言。呪文の目的は、病気や怪我の予防、降雨、豊作、旅の安全や人生の成功など人びとに幸いをもたらすことにある。あるいは逆に、他人に対する呪いとして、災厄、病気や死を与えるために用いることもある。その背景には言霊信仰など、特定の社会集団に共有された宗教的信仰体系がある。また、呪文を使用することができるのは社会集団によって異なり、宗教的職能者であったり、一般の人びとであったりする。日本本土の場合は、陰陽道・仏教・修験道などの祈禱儀礼において発達し、種々の呪文が用いられる。沖縄を中心とした南西諸島においては民間宗教者ユタが用いるほかに、一般の人びとも用いている。呪文を唱える場合、印を結ぶ、指を嚙むといった身体儀礼を伴うことも多い。また、呪文は一般には意味の分からない言葉が用いられることもあり、このことは呪文の神秘性を保つためであるとされる。
【参考】小口偉一・堀一郎監修『宗教学辞典』(東京大学出版会、一九七三)、石川栄吉他編『文化人類学事典』(弘文堂、一九九四)、福田アジオ他編『日本民俗大辞典』上・下(吉川弘文館、一九九九・二〇〇〇)
【執筆者:横井大覚】