即心念仏談義本或問余説
提供: 新纂浄土宗大辞典
そくしんねんぶつだんぎぼんわくもんよせつ/即心念仏談義本或問余説
一巻。霊空光謙撰。享保一四年(一七二九)五月作、六月刊。霊空の『即心念仏安心決定談義本』に対して反駁した敬首の『即心念仏摘欺説』に反論したもの。敬首が『摘欺説』の中で曇鸞の『略論安楽浄土義』を引用して相対絶対・四悉檀・在心・在縁・在決定・難行易行・自力他力・臨終之心・浄土受生之心等を述べているのに対して、霊空は「文辞甚だ鄙拙にて。顚倒もあり。…若し曇鸞の真作ならば。別に其真本あらん。今現行の本は。必定偽作ならん」(続浄一四・三一八下)と述べ、現行の『略論』は偽作であり、伝智顗『観経疏』や『十疑論』を取り合わせて偽作されたものであると推論し、『摘欺説』に対し反論している。これが『略論』曇鸞偽撰説の嚆矢である。
【所収】続浄一四、仏全九八
【参考】浅田正博「霊空・義瑞『即心念仏』論争考」(『大倉山論集』三四、一九九三)、福𠩤隆善「江戸中期における念仏論争」(『浄土宗学研究』六、一九七二)
【参照項目】➡略論安楽浄土義
【執筆者:伊藤弘道】