十甘露呪
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅうかんろじゅ/十甘露呪
根本陀羅尼の異称。この陀羅尼では無量光如来(阿弥陀仏)への呼びかけとして一二通りの讃歎を称揚している。そのうちの一〇通りの讃歎がアミリタと誦され、甘露と漢訳されるⓈamṛtaを用いたことによるという。その一〇とは①アミリテイ、②アミリトードバベイ、③アミリターサンバベイ、④アミリターキャラベイ、⑤アミリターシッテイ、⑥アミリターテイゼイ、⑦アミリタービギャランテイ、⑧アミリタービギャランターギャミネイ、⑨アミリターギャギャノーキチキャレイ、⑩アミリタードンドビソバレイである。中御門敬教による訳文と対照すると、①甘露よ、②甘露より生じたものよ、③甘露より発生したものよ、④甘露をその胎とするものよ、⑤甘露〔不死〕を成就したものよ、⑥甘露の威光をもつものよ、⑦甘露の〔不死にして〕勇猛なるものよ、⑧甘露の〔不死にして〕勇猛なることを行ずるものよ、⑨甘露の虚空のごとき名声をなすものよ、⑩甘露の鼓音をとどろかせるものよ、となる。なおⓈamṛtaの主な意味は「不死」。またこの語は梵語の俗語である「無量」の意のamita-に転訛され、語源的には別々の語でありながら同義となり、「甘露」という要素を阿弥陀仏に付託している。
【資料】中御門敬教「阿弥陀仏儀軌書における往生観の受容と統合—『無量寿如来観行供養儀軌』を事例として—」(『仏教文化研究』五二、二〇〇八)
【参考】田久保周誉『真言陀羅尼蔵の解説』(真言宗豊山派宗務所、一九六〇)
【執筆者:袖山榮輝】