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出世の本懐

提供: 新纂浄土宗大辞典

しゅっせのほんかい/出世の本懐

釈尊がこの娑婆世界に生まれ出た本来の目的のこと。『法華経方便品に「諸仏世尊はただ一大事因縁を以ての故に世に出現す」(正蔵九・七上)とあるように、衆生悟りの内容を示し、悟りを開かせるためにこの世に出たことはどの宗派や教学においても認めているが、その中でもっとも説き示したかった教えは何なのか、またそれがどの経典に載っているのか(出世本懐の経)という点では定まっていない。天台宗では『法華経』を、華厳宗では『華厳経』をその経とする。法然は『津戸の三郎へつかわす御返事(九月二八日付)』に「釈迦も世に出でたまう意は弥陀本願を説かんと思召おぼしめす御意」、あるいは「念仏は、弥陀にも利生の本願釈迦にも出世の本懐」(聖典四・五一九/昭法全五七二)と述べ、衆生済度は賢愚善悪に関係なく平等になされるものとの立場から、出世の本懐阿弥陀仏本願による念仏の教えを弘めることにあったとする。


【資料】聖光『西宗要』五(浄全一〇)、良忠『伝通記』五(浄全二)


【執筆者:横田善教】