万機一念成
提供: 新纂浄土宗大辞典
ばんきいちねんじょう/万機一念成
すべての衆生にとって最初に発した一声の念仏がすでに往生の要因となるものであり、それによって決定して往生するということ。尊観は『浄土十六箇条疑問答』の中で「問う、三心具足の念仏は、初めの一念より即ち往生の業を成ずるや。答う、この義、当流の鈔記の中に両義有るに似たり。謂く、一つに念数の多少を論ぜず、悉く往生の業と成る。二つに機根の浅深に随いて、業成に遅速有る。云々。予、久しく先師に従いて委しく法門を稟けると雖も、但だ一念業成の一義を伝えて未だ多念業成の義を聞かず」(浄全一一・六六四下)と言い、広く証文を出してこの義を立てている。こうした一念多念に関わる問題は、法然門下門流において異義が生じ、一念業成の他、多念業成、平生業成、臨終業成などの説を生じさせるに至った。
【資料】『糅鈔』二五
【参考】岸覚勇『略説浄土宗義史』(記主禅師鑽仰会、一九六三)
【執筆者:髙橋寿光】