一念多念分別事
提供: 新纂浄土宗大辞典
いちねんたねんふんべつじ/一念多念分別事
一巻。隆寛述。法然滅後の専修教団には、「近来専修のともがら、一念多念とてあらそふなる」(『古今著聞集』〔『日本古典文学大系』八四、一〇二頁〕)として一念多念についての問題があったことが知られるが、どちらの立場にも偏ることなく念仏するように誡めた書。親鸞はこの書の引用経典を調べて『一念多念文意』を記しており、隆寛は一念多念どちらも行として解釈しているが、親鸞は一念を信、多念を行とする見解の違いがある。本書の版本には、「建長七歳乙卯(一二五五)四月二十三日愚禿釈善信〈八十三歳〉書写之」(続浄九・二九上)とした親鸞相伝の奥書が記されている。
【所収】続浄九、正蔵八三
【参考】平井正戒『隆寛律師の浄土教 附遺文集』(『浄土宗学研究叢書』国書刊行会、一九八四)
【参照項目】➡一念多念
【執筆者:伊藤茂樹】