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提供: 新纂浄土宗大辞典

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たましい/魂

生物に宿り、生命活動や心の働きを司ると考えられているもの。「魂」の類義語として霊、霊魂、精神が挙げられる。民族、文化、宗教などによって、その定義づけは極めて多様である。もともとは自然界にある「空気の動き」や「風」を意味したが、それを起点にして人間や動物の鼻や口から出る「息」となり、さらには人間や動物の生命原理を表すようになる。また、人間の精神活動の座や人間に働きかける活力や賜物を意味するようになった。キリスト教では魂の観念は聖霊に高められ、唯一絶対の神と同一視され、神からきたものと考える。イスラム教ではキリスト教ユダヤ教と同じく神が万物の創造主であるとするが、霊は心臓に宿り、霊肉分離の形態をとる。一方、ヒンドゥー教では肉体とは別個の霊があって死後にも存続するものと考えられ、個我の本質としてアートマンを主張した。釈尊はそうしたアートマンについては論証も記述も可能ではないとみて、無記の立場をとった。魂の観念については、語源的研究のほかに個別の宗教の研究や未開・古代・現代に分けて研究する方法もあったが、表層的な宗教とは別個に基層的な宗教いわゆる民俗宗教に注目する研究もあった。特に日本では、生活化された日本仏教が注目される。すなわち、インド・中国・朝鮮において生活化された仏教が日本に導入されたことによって、日本仏教が導入時においてすでに諸文化の累積したものであったという事実である。日本人の霊魂観を伝える古文献をみてみると、アニミズム霊魂観を意味する言葉としてタマがあった。タマは人格的霊魂と人間以外に宿るスピリット(精霊)を併せもち、タマのいい面がカミになり、わるい面がモノになったと考えられるようになったといえる。


【参考】J・B・ルイン著/瀬川愛子訳『心理の領域』(北隆館、一九五〇)、E・B・タイラー著/比屋根安定訳『原始文化』(誠信書房、一九六二)


【参照項目】➡霊魂


【執筆者:藤井正雄】