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降魔

提供: 新纂浄土宗大辞典

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ごうま/降魔

悪魔を退治、降伏させること。悪魔(Ⓢmāra)とは「殺すもの、死なせるもの」の意で、仏教では仏道修行さまたげるものとする。仏伝では、釈尊悟りを開こうと菩提樹下で瞑想しているとき、天魔王・波旬はじゅん(Ⓢpāpīyas)が様々な悪魔、魔女を差し向け妨害を試みたという。例えば『雑阿含経』三九(正蔵二・二八六中~七下)では愛欲、愛念、愛楽と称する三魔女を、『スッタニパータ』(四三六~八偈)では①楽欲②不快③飢渇④渇愛⑤昏眠⑥恐怖⑦疑⑧虚栄と剛腹⑨名利⑩自讃毀他じさんきたの十軍をもって釈尊を誘惑もしくは攻めたとする。なお魔女などの出現が成道前なのか成道後なのか仏伝に二通りがある。例えば『観仏三昧海経』二、『仏本行集経』三、『普曜経』六、『修行本起経』下、『因果経』三、『仏所行讃』三、『ブッダチャリタ』一三—三などは成道前とし、『ジャータカ』「ニダーナカター」、『サンユッタ・ニカーヤ』四—三—五、『雑阿含経』三九、『別訳雑阿含経』二などは成道後の出現とする。二通りの説は悪魔の存在が、外的なものだけでないことを表し、特に成道後に出現するという後者の説においては、内面的な悪、煩悩や不安が示されたものと解してよい。いずれにせよ釈尊はそれら外的内的全ての悪魔を退けて仏道を完成させたのである。


【執筆者:牧達玄】