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菩提樹

提供: 新纂浄土宗大辞典

ぼだいじゅ/菩提樹

釈尊がその下で悟りを開いたとされるピッパラ樹(Ⓢpippala)、別名アシュヴァッタ樹(Ⓢaśvattha)のこと。その由縁から覚樹、道樹、道場樹、畢鉢羅樹(音写)とも訳される。狭義においてはこの樹木が菩提樹といわれる。クワ科の木。中国、日本でいわれる菩提樹は、葉形が似たシナノキ科の樹木。インドの霊樹信仰では樹下は生命の宿る神聖な場所とされ、過去仏は特定の樹下において成仏したという。つまり広義ではそれぞれの仏にそれぞれの菩提樹が存在する。過去七仏中の毘婆尸びばし仏はパータリ樹下、尸棄しき仏はプンダリカ樹下、毘舎浮びしゃふ仏はシャーラ樹下、俱留孫くるそん仏はシラーサ樹下、俱那含くなごん仏はウドンバラ樹下、迦葉かしょう仏はニヤグローダ樹下で菩提を得たといい、これらの樹木も菩提樹と呼ぶことができる。『無量寿経』第二十八願「見道場樹願」には、極楽世界菩提樹について言及が見られる。『普賢行願讃』註釈は、菩提とは無上の智慧であること、釈尊菩提を得た場所であること、あらゆる樹の中で最高の樹木であることなどから、「菩提樹の王」について説明する。


【参考】満久崇麿『仏典の植物』(八坂書房、一九七七)、中御門敬教「阿弥陀仏信仰の展開を支えた仏典の研究二—陳那、釈友、智軍の『普賢行願讃』理解 普賢行願区分の章(八章一節—八章一〇節)—」(『浄土宗学研究』三四、二〇〇八)


【参照項目】➡成仏見道場樹願


【執筆者:中御門敬教】