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無量寿経釈

提供: 新纂浄土宗大辞典

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むりょうじゅきょうしゃく/無量寿経釈

一巻。法然撰。法然は文治六年(一一九〇)二月、東大寺において「浄土三部経」を講説したと伝えられ、この時の講録が『三部経釈』であり、そのうち『無量寿経』に対する註釈が本書である。現存する『無量寿経釈』のテキストは、後世に加筆修正が行われている部分があり、いわゆる新層と古層があるとの説が提起されている。また『選択集』との共通部分が多く、往生院本系の『選択集』よりも『広本選択集』と一致することから、『三部経釈』の転写者が『選択集』を見ながら書き改めたのではないかと指摘されている。現存する本書のテキストは江戸時代の刊本のみであり、聖聡の『大経直談要註記』一所収のものと、『三部経釈』として『観無量寿経釈』『阿弥陀経釈』とともに刊行されたものとの二種類がある。『昭法全』では後者のうち寛永九年(一六三二)版を底本とし、承応三年(一六五四)版と正徳五年(一七一五)版による校合が加えられている。正徳五年版は最初は宝永二年(一七〇五)に刊行され、正徳五年に再版されたものである。これは義山校訂の『漢語灯録』一であり、『浄全』九に収録されたものはこれによる。『古本漢語灯録』一にも『無量寿経釈』は収められているが、冒頭部分と巻末のみが筆写されている。内容は、一「大意」(『無量寿経』のあらまし。釈尊穢土に出現し、阿弥陀仏浄土にいるのは、穢土衆生浄土に導くためであること)、二「立教開宗」(浄土宗教判について。各宗の教判を列挙し、浄土宗では道綽によって釈尊一代の仏教聖道門と浄土門に二分する。『無量寿経』は浄土門の経であること、往生浄土の教えは、煩悩の断絶していない凡夫がそのまま三界という迷いの世界を離れるから「頓中の頓」であるとする)、三「浄教不同」(往生浄土の教えの中にも根本と枝末がある。『無量寿経』は根本であり、正往生教であり、有所往生教であり、往生具足教であるとする)、四「釈名」(経題の解釈)、五「入文解釈」(本文の解釈。入文解釈は逐語釈ではない)の五つの部分からなる。なお、「入文解釈」の冒頭にある『無量寿経』の分科を示せば、序分正宗分流通分の三分科とし、正宗分を「四十八願興意」「依願修行」「所得依正」「往生行業」の四段に分ける。この正宗分の分科は道光無量寿経鈔』以後、浄土宗で伝統的に用いる分科とは異なったものである。「四十八願興意」には選択の思想が示され、女人往生について第三十五願建立の意義を詳説し、四十八願の一々に抜苦与楽の意味を見出そうとする内容が説かれる。


【所収】昭法全、浄全九、正蔵八三


【参考】岸一英「『無量寿経釈』古層の復元」(『佐藤成順博士古稀記念論文集 東洋の歴史と文化』山喜房仏書林、二〇〇四)、同「『逆修説法』と『三部経釈』」(『藤堂恭俊博士古稀記念浄土宗典籍研究 研究篇』(同朋舎出版、一九八八)、同「『三部経釈』の研究(一)」(『法然上人研究』創刊号、一九九二)


【参照項目】➡三部経釈


【執筆者:齊藤舜健】