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決答授手印疑問抄

提供: 新纂浄土宗大辞典

けっとうじゅしゅいんぎもんじょう/決答授手印疑問抄

二巻。略して『決答抄』『疑問抄』とも称される。良忠述。康元二年(一二五七)二月一八日成立。聖光授手印』について在阿が抱いた疑問に対して良忠が答えたもの。五重伝書のうち四重・証を明かす書である。本書述作の由来については序文に記されている。在阿聖光の著作『授手印』『念仏名義集』などによって念仏信仰を深めていたところ、鎮西流以外の法然門下の説法や『観経疏』講説と『授手印』の内容との相違について疑問を抱き、禅勝房道遍に質問したが要領を得ず、聖光の高弟である良忠を紹介され、在阿の疑問に決答したものを記したとされる。ちなみにこの序文には良忠在阿の物語を聞いてはじめに記したものと、道遍に話を聞いて添削して改めたものとの二種類が存在する。本書は基本的に問答体で構成されており、上巻に一〇項目二〇番の問答、下巻に二一項目六二番の問答、計三一項目八二番の問答がある。内容は『授手印』にそって、上巻に『授手印』の題号・序文、五種正行・正助二行に関するもの、下巻は三心・五念文・三種行儀四修、および奥図・結文に関するものが記されている。本書において良忠は、在阿の問いに対して、経論による論証よりも三代相承口伝による決答を呈し、また信空聖覚などの言葉によって聖光の正統性を実証・強調している。写本として増上寺蔵・聖聡自筆本(上巻のみ)、大巌寺蔵・虎角真筆本、京都禅林寺蔵・良皎書写本(文和二年〔一三五三〕)、栃木円通寺蔵・名越良順本(文明一八年〔一四八六〕)、福井西福寺蔵・名越良智本(永禄九年〔一五六六〕)があり、末書としては、性心授手印決答見聞』三巻、良心授手印決答受決鈔』二巻(共に浄全一〇)、良祐決答見聞』二巻、良天授手印決答聞書』二巻(共に続浄一〇)、聖冏銘心抄』二巻(浄全一〇)、良定授手印決答要釈』二巻などがある。


【所収】聖典五、浄全一〇、『伝灯輯要』中、昭和新訂『三巻七書』


【参考】大谷旭雄「良忠上人における口伝と決答—『決答授手印疑問鈔』を中心に—」(『仏教文化研究』三二、一九八七/大谷旭雄『法然浄土教とその周縁』坤、山喜房仏書林、二〇〇七)、深貝慈孝「『決答授手印疑問抄』解題」(聖典五、一九九八)


【執筆者:沼倉雄人】