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足曳の御影

提供: 新纂浄土宗大辞典

あしびきのみえい/足曳の御影

法然御影の一。京都市右京区嵯峨二尊院門前長神町・二尊院蔵。法然御影のうち代表的なものの一つである。『二尊院縁起』によれば、法然が湯上がりに一方の足を出して休息していたとき、詫摩法眼たくまほうげんすだれごしにその姿を写し、のち九条兼実はこの像をかけ開眼供養法然に申し出たところ、この足を出した姿を見て、「これは狼藉ろうぜきのすがたなり」と法然が祈念すると、たちまち御影の足は引き込まれたという(『続群書類従』二七上・四一八上)。これは法然の霊異、そして絵師の巧みを示すものである。三条西実隆さんじょうにしさねたかが文明七年(一四七五)七月にこの「足曳の御影」を見たことを書いているので、すでに室町時代からこの名称があったことが知られる。御影は剝落損傷がはげしく、彩色など詳細にうかがうことはできない。構図的には左斜め向きで、上畳の上に座し両手で念珠をつまぐる姿であるが、右膝の前に唐草文様の風呂敷包みが描かれているのが特徴である。この風呂敷包みは旅支度を示すもので、日常の諸道具が包まれているものといわれ、また沈んだような顔の表情から流罪直前の姿であるとの説がある。


【資料】『翼賛』五〇、『実隆公記』、『二尊院縁起』【図版】巻末付録


【参照項目】➡法然上人御影


【執筆者:成田俊治】