総本山
提供: 新纂浄土宗大辞典
そうほんざん／総本山
寺院の縁起や由緒によって宗派内での位置づけを示した呼称の一つ。その他の呼称に大本山、別格本山、本山などがある。宗派によって総本山の適用の方法は異なるが、祖廟があるなど祖師に縁の深い寺院、あるいは宗派を代表する寺院として用いられることが多い。また時代によってそれぞれの用法が異なっている。浄土宗における総本山の呼称は『鎌倉光明寺志』に見られ、明応四年（一四九五）に鎌倉光明寺が後土御門天皇から関東総本山との号を賜ったとある。この呼称は洛中の総本山に模したものとされている。知恩院は宗祖の入滅の地であり、祖廟があり総本山の呼称にふさわしい聖地であったが、嘉禄の法難の後に宗祖の遺体を荼毘に付し分骨したことで複数の聖地ができたこと、勢観房源智が知恩院（大谷禅房）と知恩寺（賀茂河原屋）の二寺に住したことなどから、大永年間（一五二一—一五二八）に両寺院の間で本山論争が起きた。その後、後柏原天皇、後奈良天皇によって知恩院が一宗の本寺であることが確認され、また天正三年（一五七五）には正親町天皇より知恩院に浄土一宗の本寺の称号と毀破綸旨が下賜されるなど、一宗の本寺としての知恩院の位置づけが確立した。江戸時代になると元和元年（一六一五）に浄土宗法度が発布され、宮門跡を知恩院、総録所を増上寺とする教団体制が確立し、また僧侶養成機関として関東十八檀林が認められ、宗内寺院の位置づけや役割が明確になった。しかし、明治時代に入ると神仏分離令、三条の教則の発布をはじめとする明治政府の宗教政策により浄土宗の体制も混乱し、一時は三河以西を知恩院、遠江以東を増上寺の所轄とし東西両管長制が行われたが、明治二二年（一八八九）には内務大臣の認可を受けて『浄土宗制』が発布され体制が定まることになった。その第八一条では寺院を総本山、大本山、檀林、通常、別格の五類とし、従来用いていた呼称として知恩院を総本山とした。その後も浄土宗内での分派統合があったが、昭和三六年（一九六一）に現在の浄土宗が成立した。このとき定められた『浄土宗宗綱』第一一条では「本宗の伝承及び由緒沿革等により、次の寺院を総本山及び大本山と定める」とし、知恩院を総本山と定めている。また同宗綱第一一条第二項で「総本山は、宗祖法然上人の本廟を守護するとともに本宗の教化及び教学の規範たる道場とし、すべての僧侶及び檀信徒の帰向する寺院とする」とし、総本山の位置づけおよび役割を明確に規定している。
【参照項目】➡大本山
【執筆者：今岡達雄】