操作

浄土論

提供: 新纂浄土宗大辞典

じょうどろん/浄土論

往生論(おうじょうろん)


三巻。釈迦才撰。撰述時期は確定できないが、玄奘訳の経論引用がないため、往生人伝に挙げられる姚婆が没した唐・貞観二二年(六四八)以降ほどなく成立したとみられる。九章立ての計四五の問答より成り、序文に道綽安楽集』の経典引用などが雑駁であることを嘆き、自ら補正を施して理解しやすいように試みたとの著述意図が述べられている。数多の浄土経論を博引傍証し、とくに『摂大乗論』『起信論』の思想的影響を強く受けている。第一章は弥陀身土論、第二章は衆生論、第三章は実践論、第四章は別時意説や二乗種不生説、第五章は十二経七論、第六章は往生人伝(曇鸞伝、道綽伝を含む)、第七章は弥陀弥勒の優劣論、第八章は末法説、第九章は西方往生勧進をそれぞれ説き、本為凡夫兼為聖人の立場を掲げて、末法世の凡夫化身化土西方浄土へ、複数の実践行を兼修して往生することを主張した。また、廬山慧遠浄影寺慧遠道綽への批判が散見されることも特色のひとつ。中国においては早くに散失したが、南都や叡山など日本浄土教の黎明期においては、『群疑論』や『十疑論』とともに、中国浄土教の基礎的な学説として受容された。法然以後は正統的な浄土教の系譜から外れたこともあり、教義面への注目は著しく減退していった。


【所収】浄全六


【参考】名畑応順『迦才浄土論の研究』(法蔵館、一九五五)、工藤量導『迦才「浄土論」と中国浄土教』(同、二〇一三)


【参照項目】➡迦才本為凡夫兼為聖人


【執筆者:工藤量導】