展鉢偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
てんばつげ/展鉢偈
食作法において唱える偈文の一つ。出家者の食事は、応量器という鉢を使うのが正式であり、「展鉢偈」を唱えて、包みを広げて鉢を取り出す。これを展鉢という。「若展鉢時 当願衆生 身心寂静 離諸粗暴」(『諸回向宝鑑』二・一六オ)。鉢を広げるとき、まさに衆生が、身心ともに寂静となり、諸々の粗暴から離れられるように願うべきである、の意。『浄土苾蒭宝庫』には「華厳浄行品に出ず」とあり、これは『六十華厳』や『八十華厳』の浄行品にある偈文「若見空鉢 当願衆生 其心清浄 空無煩悩。若見満鉢 当願衆生 具足成満 一切善法」(正蔵九・四三二中/同一〇・七一下)を改めたものと考えられる。浄土宗各修行道場等の食作法では、鉢を取り出すのではなく、「展鉢偈」の同音にて飯椀の蓋を取る(開ける)作法をしている。
【参照項目】➡食作法
【執筆者:池田智光】